創業期

AI画像解析、車載用HMIなどの技術を磨きつつ、新たな提携先を開拓する~ビジネスマッチングの仕組みを活用

アーク・システム・ソリューションズ株式会社(北海道札幌市)
代表取締役 坂本謙治

AIの開発やデータを活用したシステム運用を行うアーク・システム・ソリューションズ株式会社は、自動車向け、携帯電話向け、農業機械向けなどの分野で事業を展開しています。社長の坂本氏は、東京でソフトウェア技術者として働いたのちに北海道へ移住し、同社を立ち上げました。技術の強みをどのように事業につなげていくか。ニーズとの接点に向けたアンテナの拡げ方について、伺いました。

代表取締役 坂本謙治

――事業内容を教えてください

ソフトウェアエンジニアの仕事はたくさんありますが、どうしても地方にいくと下流工程側の仕事が多くなってきます。自分たちのサービスを開発していきたいと思い、2008年に札幌でこの会社を立ち上げました。

当時は携帯電話の第3世代が主流だった頃です。最初は携帯電話向けのソフトウェア開発が中心でした。ここで使っていた技術の1つがHMI(ヒューマンマシンインターフェース)といって、人と機械がやり取りをするためのものです。このHMIが車載向けへと広がり、現在は主力になってきました。

ここ10年ほどで携帯電話の国内生産が大きく減りました。一方で、自動車産業では大転換期が訪れようとしていました。車が移動手段というだけではなく、CASE(Connected〈コネクテッド〉、Autonomous〈自動運転〉、Shared〈共有〉、Electric〈電動化〉)という形で進化しています。コネクテッドカーと言われるように車が外部と通信することも増えてきて、車におけるソフトウェアの役割が高まってきたのです。

そこで、携帯電話にソフトウェアを供給していた会社の多くが、自動車メーカー向けへの開発をここ数年拡大しています。私たちはソフトウェア会社のパートナーとして動くことが多かったので、その流れにあわせて車向けの開発も始めました。そこから車載HMIの割合が増えていったのです。事業としてはその他に、農業機械用のソフトウェア、AIを搭載したWeb開発なども行っています。

――「J-Good Tech」はどのように活用されていますか

活用し始めたのは3年ほど前からでしょうか。その頃、「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」に応募して、雪道での自動運転を検証していました。テストができる場所を探し、北海道庁を経由して中小機構北海道本部の相談窓口にいったのですが、その担当の方から「J-Good Tech」の仕組みについて教えてもらったと思います。

従来のお客様向けの開発が事業の柱ではありますが、やはり常に新しい接点は広げたいと思っています。そうはいっても簡単にお客様と出会えるわけではありません。J-Good Techはいろいろなニーズ・シーズを持つ会社が登録していると聞きましたので、今自社が得意としている技術との接点を探すために役立つのではないかと思ったのです。

今でもわりと情報はこまめに見て、いろいろと活用しています。
まず、自社のシーズとマッチしそうなニーズを掲げている企業を探すという使い方です。可能性がありそうなところを見つけて提案してみたことが何回かあります。そういう使い方をしているうちに気づいたのですが、実はニーズがあるのではないかと様々な会社の情報を見ること自体が情報収集に役立つと気付きました。今、自社で提案できる技術領域ではなくても、「こういうニーズを持っている会社があるのか」と知ることで、開発のアイデアを得ている感覚です。

また、担当の方から頻繁に情報を流してくれるのは、忙しい時でも目に入りますので役立っています。他に、「こういうことを解決したいと思っているが、参画しませんか」という募集型で発信されているものもありますので、農業機械系のプロジェクトに参加したこともあります。

やはり既存のお客様とは違う層に出会えることが、こういう仕組みを使う利点だと思っています。提案にチャレンジしてみたところは、今までお付き合いのない業種でした。実際には、先方の持つ課題を直接解決できないと提携は難しいと感じたところもありますが、これまであまり考えていなかった広がりを考えるきっかけになりました。

――事業拡大に向けて、他にどういう取り組みをされていますか

今の主力事業は車載向けだと述べましたが、自動車産業は巨大なサプライチェーンで成り立っています。自社ならではの強みを持つことが、サプライチェーンの中でも特徴を出して貢献していけることにつながると思っていました。そこで、北海道の企業ということを活かして、雪道での自動運転というテーマには以前から取り組んでいます。先に述べた「サポイン事業」では「自律的自動運転の実現を支える人工知能搭載システムの安全性立証技術の研究開発」や「積雪寒冷地の交通弱者移動支援のための雪道走行を可能とする自動運転技術の開発」というテーマで技術を確立してきました。

AIで車両認識を行った例

また、最近は「AI×Web開発ソリューション」の観点で、Deep Learningによる画像解析システムの活用に重きを置いています。自社でAIを開発するだけではなく、収集したデータを用いてAIを適切に成長させながら運用するシステムソリューションです。まだこれから伸びる領域だと思っていますので、いつ新案件が来ても対応できるよう、常に余力ある体制を作っているところです。

――今後の展望を教えてください

もちろん事業拡大は考えていますが、拡大ありきというよりも、納得できる仕事をしていきたいという思いがあります。今やっている技術を新しい領域、新しいお客様に活かせるというのもその1つです。

また、雪道での自動運転に関する技術はさらに磨きながら強みとしていきたいと思っています。「サポイン事業」自体は終了したのですが、自社独自で環境認識を高めたり積雪状況を判断したりする技術などを開発し続けています。

スマートフォン事業は創業時からのメンバーが中核として活躍しながら、我々が持っている技術とニーズをうまくつなげられないかと模索しながら確立してきました。自動車産業になると歴史も長く、裾野も広い分、ニーズとの接点を拡大していくのがなかなか難しく思っています。しかし、CASEと言われる領域に車がシフトしつつある今、いくつかの技術を組み合わせると、ニーズに適合できる可能性も広がってきました。また、あらゆる業種でデジタル活用が進む中、私たちの持つ技術を使える先がまだあるのではないかと思っています。

これまで「サポイン事業」のように、少し先のニーズを見据えながら種をまいてきたことがいくつかあります。こうした種がようやくつながるようになってきました。強みを持つ部分を組み合わせながら、ぜひその技術を活かせる先を広げていきたいと思っています。

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