変革期

ものづくり企業のベストパートナーとして成長するために~人の成長に向けた機会づくり・環境づくり

株式会社瀬戸大同(愛知県瀬戸市)
代表取締役社長 加藤雄也

株式会社瀬戸大同は、50年以上にわたり地域のものづくり企業をサポートする存在として、工具・機器類、工場設備類を扱ってきた会社です。お客様との信頼関係づくりのためにも、会社の成長のためにも欠かせないのは人財だという考えで、人財育成には早くから力を入れてきました。どういう背景から人・組織づくりに取り組んでこられたのか。お話を伺いました。

代表取締役社長 加藤雄也

――事業内容を教えてください

製造業のお客様に対して、機械部品や材料、工具などを納めるのが当社の主な事業です。機械の設置まで請け負うこともありますので、卸売業かつ建設業という区分に位置しています。ねじ1本から工作機械まで何でもお届けします。大型のものでいうと、たとえば荷積作業を省人化したいとお考えの会社から相談を受けて「パレタイズロボット」、溶接の効率をあげたいとのご相談に応えた「自動溶接機」などをご提案し、納入・設置まで一貫して進めております。

「ものづくり企業のベストパートナー」が私たちの目指すところです。現在愛知県・岐阜県で計4店舗を構えて、各エリアのお客様にお伺いしています。日々のお困りごとをお伺いするようなルートセールスを基本にしつつ、新しいお客様への接点もできるだけ広げていこうとしています。

昭和42年に先々代が立ち上げた会社ですが、今の従業員構成としては若手が多いのが特徴だと思います。最近は新卒採用も定期的に行い、ここ10年で人数が約2倍に拡大してきました。

――人財育成への課題意識と取り組みの経緯を教えてください

人財育成には、先代の頃からかなり力を入れていました。私もその方針には大いに賛同しますので、代替わりしても踏襲しています。

当社のような仕事スタイルは、決まったお客様に高頻度でお会いしていくことになります。すると、人間関係の構築が、お客様からの相談を受けるにも欠かせません。特に先代が社長になった頃はまだ規模も小さく、セールス力も値段もなかなか他社にはかなわない時期だったと思います。どうやってお客様に対して価値を出していくかと考えたときに、行きつくのは人財の力です。そこで、人財育成に力を入れるようになりました。現在はかなり事業規模としても成長し、競争力もついてきました。これまで培ってきた人財の力に加えてスケールメリットを出すことで、さらに魅力を高めていけたらと考えているところです。

人財育成の1つとして、先代の頃から中小企業大学校の講座を活用させてもらっています。実は本社のある愛知県瀬戸市には中小企業大学校の瀬戸校が置かれていますので、そうしたご縁もありました。開講講座一覧を社内で回覧し、興味のある講座を自分で選んで使ってもらっています。先代の社長が活用する良さを語って推奨していたので、各々がわりと熱心に自分が学びたいものを選び、使ってくれていたと思います。営業力向上、リーダーシップ強化、あるいはお客様の業務を知るために生産管理の基礎講座などを受けていた人もいました。

実は私自身も、入社して間もないころに「経営後継者研修」を受講したことがあります。これは10カ月間みっちりと行うもので東京校にて受講しました。この学びの機会は本当に実になりました。コロナ禍においても、もしこの研修を受けていなかったら右往左往してしまったことでしょう。研修で財務を中心に経営を組み立てていく方法を学びましたので、現状をきちんと把握しながら打ち手をとっていくことができました。当時体験したチームの作り方も、社内で活用しています。今でもこのときの同級生やゼミの先生とは縁が続いており、いろいろな刺激をもらっているところです。

コロナ禍のここ2年は、対面機会をできるだけ避けようと活用を控えていましたが、ここからまた、活用していければと思っています。加えて、中小企業大学校の受講経験を活かして、社内で新たにマネジャー層向け研修をはじめました。マネジャー層が経営視点をもって数字管理や部下育成できることが、会社の成長の肝になってくると感じていたので、1年半ほど続けています。

――組織力強化に向けた他の取り組みもございますか

最近力を入れているのは、組織化です。担当に分けるとどうしても属人化しがちなのですが、当然その人が辞めてしまうと混乱が起こります。当社のようなルートセールスはお客様との濃い人間関係づくりが必要だとされてきましたが、属人になりすぎると人が変わったときにゼロに戻ってしまいます。時にはマイナスからスタートにもなりかねません。やはり会社としてご縁をつなげていくために情報共有なども必要ですので、ツールも活用しながら個人の特性に任せる部分と、会社として共通知にしていく部分とを整理し始めています。

また、入社してきた人を年の近い先輩がフォローする制度も設けています。入社してからの不安は解消できる環境づくりが大事だと思いますので、メンターのような形でサポート体制を作っています。

一方、採用に関連した工夫もいくつか行っています。たとえばインターンシップはできるだけありのままを見てもらうのが重要だと考えました。そこで営業でも仕入れ先との折衝でも、できるだけ現場に同行してもらう体験型をとっています。採用面接も一方的ではなく、双方が理解を深めるようなやり方にしました。また、SNSでの発信も採用を意識して行っています。実は採用者への認知効果を期待して社用車でスポーツカーを1台買ったのですが、まさにそこに反応して当社に興味を持ってくれた人もいました。

人財育成・組織づくりに関しては、私が中小企業大学校に通っているときに、ある先生から言われた言葉が非常に大きな指針になっています。集約すると、「人財育成が大事だという言葉に逃げない」という内容で、従業員側に成長を押し付けるものではないということだと思っています。もともと勉強が好きだった人ばかりではないですし、余計なことはしたくないという考えの人もいることでしょう。「経営者の役割は、どういう人であれ仕事をするなかでおのずと成長していくような仕組みや環境を作ることだ」とその先生が話していたのですが、それを聞いた時に目からうろこが落ちたような気がしました。

そこで、各自が仕事に追われ過ぎないよう、業務効率化も進めようと思いました。たとえばインターネット注文の仕組みを導入して既製品などはお客様に直接注文して頂き、課題解決型の部分を重点的に提案型でサポートしていくようにしました。また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を事務処理に導入し、転記作業のようなものは自動化しています。空いた時間は他の仕事のプロセス改善などにあてられていますし、全体的な残業時間も削減できたと思います。その分、従業員は家族との時間、自分の時間を持てるようになりました。仕事以外の時間で気づいたことを職場で話してもらうことが、何かしらヒントになることもあると思っています。

――今後の展望を教えてください

将来的には、わりと野心的な目標をたてており、従業員とも共有しています。その時に必要なのは、新しい発想です。若い人は新しい価値観をたくさん教えてくれますが、それ自体が当社の強みであると思っています。できるだけ日々従業員との会話を増やし、いろいろと発想を広げられたらと考えています。

たとえば最近レンタルビジネスをはじめました。このヒントは、若い従業員がレンタルベビーベッドを使っているという話からです。使う期間が限られているものほどレンタルサービスが成り立つわけですが、私たちの扱う中にも季節利用のような商品があります。使わなくなったら当社が引き取り、メンテナンスしてまた翌年貸し出すというような形でサービス化しました。最初はお客様側にレンタル利用の発想がなかったと思うのですが、サービス開始から2年ほどたった今、品切れになるものが出るほど利用率があがっています。

中小企業大学校で学んだ際に、社長の属人化による問題というのも考えさせられるテーマでした。当社も先代のときには社長のリーダーシップで牽引していた部分もあったと思いますが、私自身、そういうタイプでもありません。いかに組織として成長するかを考えていきたいと思っています。そこで、マネジャーたちに対しても「どうしたらよいと思うか」を常に問いかけました。最初は答えを聞こうとしていたと思いますが、問いを繰り返すと、それぞれの意見を持ってきてくれるようになります。1人ひとりが考える組織として組織力をいかに高めていくかに注力しつつ、今後さらなる発展をしていきたいと思います。

株式会社瀬戸大同本社外観

次のステージに行くにはマップをクリック

大航海時代 偉人タイプ診断