創業期

育児もキャリアもあきらめない!女性を応援するため起業~託児付きコワーキングスペース

コワーキングスペース レイジーナアキラ(福岡県福岡市南区)
代表 若杉和枝

自分自身が子育てと仕事の両立に悩んだ気持ちをもとに、同じような気持ちの人たちを応援したいと2021年3月に福岡市で託児付きコワーキングスペース「レイジーナアキラ」をオープンさせた若杉さん。事業を立ち上げるまでの経緯と今後の展望を伺いました。

代表 若杉和枝

――事業内容と、運営しているスペースの特徴を教えてください

福岡市南区井尻に古くからある井尻商店街の中でコワーキングスペースを運営しています。最寄り駅から徒歩3分の場所に位置し、通勤、通学、買い物等で賑わいます。私自身が子育てとキャリアの両立方法を模索する中で「あきらめたくない」思いから、この事業を開始しました。

レイジーナアキラの特徴は3つあります。まず1つは、「託児付き」のコワーキングスペースで保育士がいること。それから、仕事のシェアをしていること。そして、仕事にブランクのある方のキャリアアップサポートをしていることです。私自身が現役のシステムエンジニアということもあり、特にブランクのある元エンジニアのキャリア再開のサポートに力を入れています。

子育てのためにキャリアアップを断念する人も少なくありません。子育てもキャリアもあきらめない働き方ができるようにと、託児付きコワーキングスペースにしました。もちろん、託児を利用せず、コワーキングスペースとしてのみ使う方もいらっしゃいます。
子育てのために、それまで積んできたキャリアを捨て、キャリアダウンする選択を余儀なくされる女性が少なくありません。それは非常にもったいない。子育ての時期はキャリア形成の時期でもあるはずです。子育てのためにハイスキルな仕事を手放すのではなく、子育てもキャリアもあきらめない生き方を叶える、そんな場所になりつつあります。

また、場の運営だけではなく、仕事のシェアができることも開業前から目指してきたことのひとつでした。開業半年前にフリーランスになった際、「これはシェアできそうな仕事だな」という案件をいくつか経験できたことから、開業後の実現可能性の手ごたえを感じました。更には、このような仕事のシェアをご利用者様同士で行えるようサポートを行い、実際に、ご利用者様同士での仕事のシェアが起こるようになってきました。

そしてキャリアアップサポートは、子育てなどでブランクがありIT業界への現場復帰をあきらめている元プログラマーが、それまでのキャリアを活かした働き方ができるようサポートするサービスとして始めました。ブランクのある方には段階的にお仕事を依頼するなど、無理なく現場復帰できるようサポートしています。実際に10年以上ブランクのあるエンジニアや、時短且つフルリモートで活躍しているメンバーもいます。また、ITスキルが高くない方へはサポートデスク業務等を業務委託しています。そこからスキルアップして、今ではIT業界のお仕事をお任せしている方もいます。結婚や出産でキャリアが途切れてしまっても、以前働いていた時のスキルは十分生かすことができます。再活躍のきっかけになっていけるよう、現在力を入れている取り組みです。

――事業立ち上げの背景を教えてください

私は以前IT会社でシステムエンジニアとして働いていました。子ども3人を育てながら現在までIT系の仕事を継続しています。出産やパートナーの転勤に伴い、働き方をセーブしながら仕事は続けていました。上の2人の育児期は、保育園に11時間程預けても時短勤務、仕事の遅れをカバーするために土曜出勤、子どもの急な体調不良時には病児保育を活用。その時は、自身が満足できる働き方がしたい、一方で子育てはこれでいいんだろうか、という思いをずっと抱えており、仕事と子育ての両立は難しいと痛感していました。

3人目の妊娠が分かった時、涙が出るほど嬉しかった半面、「またキャリアがストップしてしまう、もうこのポジションには戻れないだろう」とネガティブな気持ちにもなりました。出産前はスキルアップのための勉強の時間を作れたけど、出産後はそうはいきませんでした。出産当時住んでいた大阪には、子連れで利用できるコワーキングスペースがあって、そこだったら勉強や仕事ができると考え、これは1つの選択肢になると思ったのですが、地元の福岡に夫の転勤で戻ることになりました。その当時、近隣に子連れで常時利用できるコワーキングスペースはありませんでした。

そこで本格的に考え始めたのが、託児付きコワーキングスペースの運営でした。集中できる時間を作るためには、託児サービスが必須であり、保育士による託児付きにすることで、自分と同じように、子どものそばで安心して勉強や仕事をしたいと思っている親が使える場にしたいと考え始めたのです。

スキルも働く意欲もあるけれど、どうしても仕事へのチャレンジを控える人が出てしまう状況や、待機児童の問題で働くことができないという状況にも問題意識がありました。そこで、キャリア再開のサポートをする場、仕事をシェアする場という構想も同時に検討し始めました。

――事業立ち上げの過程はいかがでしたか?

最初は想いが先行して、空きスペースを探して運営すればよいと考えました。そこで目を付けたのが塾の空き時間です。実際にあちこち電話をして、話を聞いてくれる先に訪問もしました。しかしそこで言われたのは、スモールビジネスとしても厳しそうだ、という言葉です。そもそも事業としての継続性が考えられていないと、人を納得させるのも難しいと痛感しました。

そうはいっても事業の作り方はわからなかったので、相談先を探しました。最初に訪れたのは、日本政策金融公庫の女性起業家への無料相談会です。そこで福岡県よろず支援拠点を紹介してもらいました。ビジネスプランを持参し、いろいろとアドバイスをもらいました。どうやって現実的な収支計画をつくるか。どのように告知や集客をするか。1つひとつ具体的にすることで、何が不足しているかが見えてきました。

さらに、アイデアをブラッシュアップしたり情報収集するために、中小機構の提供する「起業ライダー マモル」も使いました。LINEでチャット方式での相談スタイルだったので、私にはもってこいでした。第3子がまだ乳幼児の時期だったので、子育てでとにかく時間がとられます。スキマ時間にスマホを片手に「起業ライダー マモル」をしばしば活用しました。アイデアを入力してチャット相談を活用したり、起業に必要な情報をスマホで探して勉強できたのは、とても有効でした。

また、事業計画を添削してくれるサービスも良かったです。中小企業診断士の方からアドバイスをもらえ、新しい発見がありました。たとえば、ターゲットの考え方です。コワーキングスペースの利用者ばかりを考えていましたが、仕事のシェアというアイデアがあるなら企業もターゲットになるのではないか、という指摘を頂きました。自分には全くなかった視点です。確かに仕事のシェアといっても、どうやって仕事を受注し続けるかが課題になってきます。実際には以前の仕事の縁で受注が広がったのでうまく立ち上げられたのですが、事業計画の現実性を高めるための観点をいろいろと頂きました。

――今後の展望を教えてください

現在で運営をはじめて約1年半になりますが、正直、最初の計画の甘さも後々感じています。集客の難しさは常に感じるところです。実は、事業運営に関しては、福岡県よろず支援拠点を継続的に活用させてもらっています。なかなか相談できる人もいませんので、プロの第三者のアドバイスは非常に有効です。さらに、起業当初から相談している相談員さんがいるので頼りにしています。

一方、もちろん大変なことは多いですが、「起業して良かった」と心から思っています。起業なんて、行動力がある選ばれた人だけがやるイメージだったのですが、私のような「普通の人」でも、沢山の方に支えられ、やってみたらできたという感覚です。

コワーキングスペースにはいろいろな方が来てくれ、年齢も業種も様々で、皆さんとお話しできるのが、まずとても楽しいです。また、つながりをつくっていくと、新しいアイデアや新たなシェアが生まれます。こうした毎日は、会社員時代にはできなかったこと。この場所を作ることができて良かったなと改めて思います。

コワーキングスペースの名前は、3人の子どもの名前にちなんで付けました。事業を考えた原点は、「子どもたちにとってどうなのか」という思いでした。それをいつまでも忘れずにいたいと思って、あえてこの名前にしたのです。自身の子どもが成長しても「育児とキャリアの両立の難しさや乳幼児期の保護者の悩みや不安」を忘れないよう、何かの判断に困ったときは、子どもたち「利用してくれている子ども=自分の子ども」にとってどうかで判断したいと考えています。子育てもキャリアもあきらめない人たちを応援する場所として、今後も発展していきたいと思っています。

コワーキングスペース レイジーナアキラ正面

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