BCP、事業継続力強化計画を
日々磨く姿勢を世の中に
積極的に発信すれば、
企業の信頼価値向上につながる

2021年10月11日 12時00分 公開

シブボウ株式会社の渋沢栄一社長や、株式会社MANJIRO英会話のジョン万次郎社長も過去に参加した中小企業「強靱化」シンポジウムが、今年も10月27日に開催される。そのシンポジウムに先立って行われたキックオフイベントに登壇した株式会社マルワの鳥原久資社長に、危機を乗り越える「強靱な経営」をテーマに話を聞いた。

企業経営の強靱化、BCP(事業継続計画)という言葉もあまり知られていなかった2005年。地元・愛知県名古屋市で地球環境に配慮する社会の創造をテーマにした「愛・地球博(愛知万博)」が開催されたのを機に、環境活動への意識を高めるとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001)を取得した株式会社マルワ。その陣頭指揮を執る鳥原久資社長は、2007年、すでにBCPを策定しており、かなり早期から自社の事業継続力強化に邁進している経営者のひとりである。

地元の教育大学を卒業後、小学校と中学校で8年間教員を務めた後、30歳を過ぎて父が経営する印刷会社に入社。「事業承継したくなかった」と当時を振り返りつつも、その後二代目社長に就任した。「印刷会社は印刷ができて当たり前。だからこそ、違ったところで尖る(強みを出す)」ことが必要であると、鳥原社長は考えていた。

そんな折、愛知県や名古屋市、また同地域の商工会議所などが中心となり、企業の地震対策の強化を薦める動きが強まり、マルワが在籍している愛知県印刷工業組合からBCP(事業継続計画)策定のモデルしてみてはどうか、という話が舞い込む。この時、鳥原社長は「これは将来を考えると絶対にやっておくべきだ」と直感的に感じた。

当時のBCP策定には、現在のようなフォーマットやシートはなく、完全にゼロベースで計画書を作っていく必要があった。鳥原社長は、最初にBCPを策定してから現在まで20回以上改正しているが、それは必要なものを随時盛り込んでいった結果だという。

事業継続発動イメージ

▲ 2021年1月15日 鳥原社長のブログより引用

BCPに加え、令和2年には『事業継続力強化計画』の認定を取得するが、計画は策定するだけでは意味がない、と鳥原社長は語る。大切なのは日頃からの社員への周知徹底。もし非常事態になったら、まず何をすればいいのか。そんな時のためにBCPや事業継続力強化計画があるということを、社内全体で共有しておくことが重要だという。

また、企業がBCPや事業継続力強化計画に取り組んでいる姿勢は、大きなプラスになる。鳥原社長はブログでBCPや事業継続力強化計画に関する情報を発信していたことで、自社の知名度がアップし、海外から視察団も訪れるようになったという。「BCPや事業継続力強化計画は取引先に会社を知ってもらえるため、ビジネスチャンスを広げるきっかけになっている」と語る。

このコーナーでは、『事業継続力強化計画』の作成には何から始めたらいいのか。経営者の意識や社員に対する接し方、さらにコストをできるだけ抑えるデータバックアップの方法など、鳥原社長がこれまでに培った数々のノウハウを紹介する。今後、事業継続力強化計画策定に取り組む中小企業経営者にとっては、とても興味深い話になるだろう。

この困難な時代を戦い抜くために必要な平時からの備えとは?10月27日に開催される中小企業「強靱化」シンポジウムでは、実際に自然災害や感染症などに遭遇し、それを乗り越えた経験をお持ちの経営者が登壇し、非常事態をどう乗り切ったのか、さらには平時から企業価値や災害対応の柔軟性をどのように磨いていたのかを紹介する。

令和3年度 中小企業「強靱化」
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株式会社マルワ 代表取締役社長

鳥原久資

1958年名古屋市生まれ、大学卒業後8年間の小学校・中学校教員を経て、89年株式会社丸和印刷(現株式会社マルワ)入社、98年代表取締役社長就任。愛知県印刷工業組合理事長、全国印刷工業組合連合会副会長、NPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会理事。2007年にBCPを策定して以来、11年間で20回以上の改正を重ね、遠隔地の企業とのBCP連携を進めるなど、経営の強靱化に積極的に取り組む。令和2年に事業継続力強化計画の認定取得。

鳥原久資