SDGsに関するアンケート調査*1では、「SDGsに取り組んでいる」「取り組みたいと思っている」企業は合計で67.7%にのぼりました。一方、「具体的な目標・KPIの設定の仕方がわからない」「何から取り組んでいいかわからない」という課題を挙げる会社も数多くあります。しかし、SDGsは特別な活動ではありません。事業活動そのものが対象です。そこで中小機構では、情報提供や経営相談を通じて、より多くの中小企業・小規模事業者がSDGsへの取り組みをイメージできるような支援に力を入れています。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は知っているけれど、新たに取り組む余裕はないと思っている方もいるのではないでしょうか。
SDGsは、決して新たにはじめることばかりではありません。むしろ、すでにSDGsを体現した経営をしている会社も少なくないはずです。なぜなら、SDGsのめざすゴールの中には「中小企業の活動や成長、起業等の促進」も含まれているからです。
SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された17のゴール・169のターゲットで構成される世界全体の目標です。2015年から2030年までに気候変動やエネルギー問題、貧困課題などを解決し、持続可能な社会になっていくことをめざしています。
我が国でも2030年までの10年間をSDGs達成に向けた「行動の10年」と据え、2019年より施策を強化しています。たとえば「成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション」という分野の強化もその1つです。これは、中小企業の活動と密接に関わる領域と言えるでしょう。
地域社会と経済を支える企業活動そのものが、SDGsへの取り組みを後押しするうえでは重要です。「働きがいも経済成長も(ターゲット8)」というのがSDGsのめざすゴールの1つに掲げられていますが、各地域に根差す中小企業は、その担い手そのものと位置づけられています。
さらに、技術革新による環境負荷の低下やエネルギー効率の改善や、イノベーションによる高いレベルの生産性実現は、「産業と技術革新の基盤をつくろう(ターゲット9)」、「つくる責任、つかう責任(ターゲット12)」、「気候変動に具体的な対策を(ターゲット13)」といった項目の達成に向けて期待される領域です。さまざまな技術を持つ中小企業の活躍は、その実現に欠かせないと捉えられています。
中小機構が掲げる「中小企業や地域社会の皆様に多彩なサービスを提供することを通じ、豊かで潤いのある日本を作る」という基本理念は、SDGsの基本理念に通じるものです。実際に、中小機構が実施している支援施策とSDGsの趣旨との合致点を整理してみると、たとえば「復興支援・災害対応」や「事業継続力強化支援」は、「気候変動に具体的な対策を(ターゲット13)」と合致しますし、「創業・ベンチャー支援」や「経営支援」は「産業と技術革新の基盤をつくろう(ターゲット9)」と合致します。
中小機構では、実施する支援施策を通じた形以外でも、SDGsを中小企業に浸透させるため、中小企業や支援機関に対するSDGsの広報・啓発等に力を入れています。
その大前提となる、中小機構のSDGs支援の取り組み方針をまとめた「中小企業SDGs応援宣言」を2021年3月に公表しました。あわせて中小企業SDGs推進本部を設置し、中小企業が具体的に取り組むためのサポートを本格化しました。
中小企業者に対するSDGsへの理解を促進するため全国各地の地域本部が主催するセミナーを開催しています。「中小企業のための事例に学ぶSDGsの導入と実践」、「ゼロから学べるSDGs活用セミナー」といったタイトルで、2021年度は年間20回以上実施しました。何がSDGsの実践となるのか、まだイメージがつかない方にはぜひ、こうした機会を使った情報収集からはじめていただければ幸いです。
たとえば、四国本部が企画・協力し、高知県主催で開催した、「こうちSDGs推進セミナー」では、近畿本部の職員が登壇し、実際にSDGsに取り組む近畿圏の企業事例を紹介しました。同規模の企業の具体的な取り組みを聞ける機会だったこともあり、300人を超える事業者に参加いただいています。
SDGsの趣旨に則った経営の推進は、取引先との関係上も重要視されるようになってきています。たとえば中小機構が運営するウェブマッチングサイト「J-GoodTech」登録企業の1,744者が回答したアンケート調査*1では、「取引先の動向の変化」として「環境面(再生可能エネルギーの使用、環境付加軽減等)に対する要求事項が厳しくなった」は600者以上、「社会面(人権問題、雇用労働法関連等)に対する要求事項が厳しくなった」は300者以上がそうであると回答しました。こうした変化対応にも備えてセミナーに参加される方もいらっしゃいます。
具体的なSDGsへの取り組み方については、「中小企業のためのSDGs活用ガイドブック」を公開しています。これは、「SDGsに取り組みたいが、本業とSDGsの結びつきが見出し難い」「何から取り組めばよいかわからない」といった企業の声を受けて、中小機構近畿本部が近畿経済産業局・事業構想大学院大学の協力のもとで作成したものです。
ガイドブックではまず、消費者・顧客、取引先、資金調達、採用という4つの観点で、SDGsへ取り組むことの効果を示しています。たとえば採用において、社会に貢献している企業を選びたいという若者は増えています。自社事業がどのようにSDGsに貢献しているか、また、本業以外でもSDGsへの貢献に繋がっている取組みはないか整理し、発信していくことが非常に重要になっています。自社活動の意義を伝える場面が、採用活動においても、金融機関や取引先に対しての説明としても、増えてきています。
進め方としては、5つのステップを紹介しています。
ポイントは、SDGsの基本を理解したうえで、自社事業におけるSDGsの貢献にあたる取り組み探しからはじめることです。そもそもSDGsは特別なことではなく、通常の経営改善の中にある身近なものです。SDGsという観点で改めて見返すと「サプライチェーン全体から見たときにより進化させられる点があるのではないか」「自社の強みの伝え方に改善できる点があるのではないか」と、経営改善のためのヒントも見えてきます。
さらにガイドブックの後半には、経営課題別のSDGs実践のステップと、詳しい企業事例が載っています。「社員教育に力を入れた」「働く環境を改善した」といった事例から、「工場を集約して物流エネルギーを削減した」「過剰生産を抑制して廃棄を削減した」といった事例について、どのような背景から取り組んだかが書かれていますので、ぜひご覧ください。
その他、SDGsに関する情報提供や実践支援として、次のようなものがあります。
これからの社会づくりには、中小企業・小規模事業者の活躍と持続的な発展が欠かせません。中小機構としても、役職員一丸となって、中小企業・小規模事業者のSDGsへの取り組みをさまざまな形で後押しし、サステナビリティ社会の実現に貢献していきます。
*1 ビジネスマッチングサイト「J-GoodTech」利用会員にとったアンケート調査https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/journal/eventreport/eventreport-009/