支援先に役立つ中小機構の事業紹介:デジタル化編(前編)

2021年11月17日 12時00分 公開

生産性に直結するのがデジタル化の推進。費用や体制面が理由で止まらないようにしたいと、中小機構ではさまざまな支援策を設けています。中小企業を支援する立場の方々にそれぞれの特徴を知ってもらい、支援先企業にあわせて活用していただくために、実際の支援に関わる村上さんにお話を伺いました。

※お話を伺った方:中小機構中小企業アドバイザー 村上知也さん

■目的別に選べる中小機構のIT支援策

ITツールの導入、デジタル化をしたいけれども進め方がわからないという声を聞くことも多く、中小機構では中小企業の生産性向上を目的としてさまざまなIT化、デジタル化に関連する支援策を展開しています。ITツールが生産性を大きく変えることは、誰もが理解していることでしょう。一方現実には、中小企業にとって、今のやり方に慣れている、新たなやり方を実行することへのリスクなどをお感じになるなど、なかなか実行に至らないケースも多く見られます。

しかし、うまく支援策を活用しながらIT化・デジタル化を進めている中小企業は、着実に成果を出しています。ここでまず、中小機構のおこなっている6つの主なIT支援策をご紹介します。なお一連のIT施策について、「ITプラットフォーム」と情報発信を行っています

  1. IT戦略ナビ:自社のIT戦略について確認したいときの自己診断ツール
  2. E-SODAN:IT活用の相談を、チャットで気軽に相談できるサービス
  3. IT経営簡易診断:中小機構が派遣する専門家との面談を通して経営課題・業務課題を全体最適の視点から整理・見える化するサービス
  4. ここからアプリ:目的・業種ごとにアプリを検索したり、事例動画を閲覧するなど、IT導入の情報を検索等できるサービス
  5. デジタル化応援隊事業:専門家がIT化、デジタル化をサポートする補助制度
  6. IT導入補助金:ITツールの導入に対する補助制度

【ITプラットフォームの全体像】ITプラットフォームの全体像PDFで閲覧

たとえば④「ここからアプリ」は、中小企業・小規模事業者のニーズにあったビジネスアプリに絞って情報検索できるツールです。私自身、さまざまな企業のデジタル化支援に関わることが多いのですが、経営者とお話しすると、どういったワードにより検索すればよいかわからないというような声を伺います。

実際、ある工場に伺ったときに、お客様に提示などされる図面の管理がしっかりとできていないのではとの印象を受けました。そこで、「図面管理システムを使うということも考えられますかね?」と話題に出したところ、「なるほど、『図面管理』という名称で検索したらいいんですね」とお気づきになられました。事業者ごとに異なりますが、専用の図面管理システムでなくても、クラウドのファイル共有システムを利用できれば十分という事業者もいらっしゃるかもしれません。「ここからアプリ」には、ビジネス用アプリケーションの検索に関して、自社の課題別の検索方法もありますので、他社の事例を見ながら自社で導入するツール(アプリケーション)を検討いただくこともできます。

■中小企業を支援する方にこそ知ってほしい各支援策の使い方

中小企業を支援される支援者の皆様には、ぜひこうしたIT支援策を活用し、支援先企業の発展に活かしてもらえたらと思っています。支援者にご利用いただく際のご活用例として次のようなものがあります。

  1. IT戦略ナビ:支援先企業の課題や事象を「IT戦略マップ」の問いに沿って選択していくと、ソリューションが提案されますので、経営者と自社の課題やその対応方針を分かりやすく見える化してお話いただけます。
  2. E-SODAN:無料で気軽にチャットでの相談ができますので、支援者の方自身が確認されたいことを問い合わせていただくことも可能です。
  3. IT経営簡易診断:支援者の方がIT支援のご経験が少ない、他の専門家の意見も参考にしてみたいなどの場合には、中小機構の専門家を活用することも可能です。第三者の立場から課題の整理や見える化をおこなったうえで、ITの導入を検討いただくような活用としておすすめです。
  4. ここからアプリ:支援者ご自身のIT化・デジタル化の情報収集として、掲載されている事例などを参考にしていただけます。また、「経営指導員向けIT支援力アップミニ講座」「アプリ選択ガイド」「サポートブック」なども掲載していますので、スキルアップや知識向上のツールとしてもご活用いただけます。
  5. デジタル化応援隊事業:特定の領域のIT化、デジタル化に関し、知見のある専門家による支援をいただくことが可能です。(第Ⅱ期中小企業デジタル化応援隊事業のご登録は11月1日で締め切りとさせていただいております。)。
  6. IT導入補助金:ツール導入を決めていく際に、実際のツール費用を補助してもらえる制度として支援先企業に紹介していただくとよいでしょう。

実際には、ご支援される中小企業それぞれの業務特性、IT化の進展度などにあわせて有効な手段が変わります。また、支援者ご自身がIT導入のご支援の有無などにより、各支援策のご活用の方法も変わってくるでしょう。具体的なシーン別に活用方法をご紹介します。

■活用方法1:「IT戦略ナビ」や「ここからアプリ」で支援先中小企業に適した形態を探る

1つめに、デジタル化の課題はあるものの何から手をつけてよいかわからない、小規模事業者を支援する場合です。

<進め方の例>

  1. 1.「IT戦略ナビ」を経営者とともに活用し、課題の優先度を整理する
  2. 2.「ここからアプリ」で優先課題に役立つツールを検索し、関連事例を参照する
  3. 3.ツール導入方針について経営者と話し合い、可能なら試用版を触ってみる
  4. 4.「IT導入補助金」を活用して、最適ツールを導入する

小規模事業者向けにご支援される際に注意いただきたいのは、当社にとってオーバースペックな製品を選んでしまうことです。ツールの多くは、使用人数や追加機能によって費用が変動するため、費用を明記していないことがよくあります。支援者ご自身も支援先事業者に適したものか否かの判断がつかずに困ったことはないでしょうか。「ここからアプリ」には基本的に、5人(ユーザー)が1年間利用される際の導入費用(コスト)を掲載しています。また、一定期間無料で活用できるかなどの情報も掲載しています。ある程度条件が合致したツールの情報を持つことで、支援先中小企業と現実的な活用方針が話し合いやすくなるはずです。

(「ここからアプリ」の画面例)「ここからアプリ」の画面例

■活用方法2:外部専門家を活用し、将来最適視点でのデジタル化を推進

2つめに、数十人以上の規模の中小企業などがデジタル化の課題を抱えている場合です。組織規模が大きい分、さまざまな業務がそれぞれ関係性をもって存在しているため、現状把握の精度が重要になります。支援者の方がIT化・デジタル化をご専門とされていれば、現状分析から導入までを伴走しながら「IT導入補助金」などの活用を支援先企業に促していけるとよいでしょう。一方、支援者の方がIT化・デジタル化のご支援等のご経験が少ない場合には、知見のある外部専門家と協働で支援する体制をつくられご支援されるのも1つの方法です。

<進め方の例>

  1. 1.「IT経営簡易診断」を活用し、3回の面談を通じて中小機構の専門家に現状を分析してもらう
  2. 2.IT活用の方向性について「IT経営簡易診断」で提案された内容に関して、中小企業側とご一緒に検討する
  3. 3.導入した際の業務フローへの影響を精査し、各現場と実用性を詰める
  4. 4.「IT導入補助金」を活用して、最適ツールを導入する

この規模の事業者になると、「会計システム」「顧客管理システム」「勤怠管理システム」など各分野でデジタル化を進めているものの、連携がとれずに困るといった複雑な課題が生じてきます。将来的な使い方まで見越して最適設計をする必要がありますので、それに長けた専門家に現状診断をしてもらうと方向性が見えやすくなるでしょう。

中小企業側としても、支援者とともに外部専門家を活用するスキームは使い勝手がよいはずです。IT専門家からの指摘は経営全般にわたることもあるでしょうが、それを中小企業側の立場で一緒に考えていく役割としての参画です。

具体的な活用例は「ここからアプリ」に動画付で掲載されています。支援先中小企業の類似業種、類似規模の事例をご覧いただくと、ご支援のヒントが見つかるかもしれません。

後編の記事はこちらからご覧いただけます。