中小機構の事業紹介:人材育成編

2022年3月18日 12時00分 公開

事業を中核で支える人材の成長は、将来にわたる企業成長を左右します。中小機構では、中小企業向けの人材育成機関として、中小企業大学校を長く運営してきました。実務課題に直結するプログラムを用意し、年間で1万人を超える方に受講して頂いています。最近はオンラインのWEBee Campusも充実してきました。実践的な研修の特徴と活用観点について、中小企業大学校web校長の佐藤さんにお話を伺いました。

※お話を伺った方:中小企業大学校web校長 佐藤正博さん

■OJT・Off-JT・自己啓発の組み合わせが成長スピードを加速

職場での日々の業務は、大きな成長の機会です。OJTを含む職場経験を積み重ねるなかで、実務の力が高まり、成果が生まれてくることでしょう。特に同じ業務の習熟においては、経験が大いに役立ちます。

ただし、経験だけでは適応できない場面も出てきます。たとえば、新しい責務を担う、新しい事業を担当するといったとき。あるいは自己流のやり方では限界を感じはじめたとき。そうしたときに研修などのOff-JTや自己啓発の機会が視野を広げます。OJT、Off-JT、自己啓発という3要素が効果的に組み合わさると、成長スピードはぐっと加速します。

令和2年度の「能力開発実態調査」を見ると、社員が考える自信のある能力・スキルと、企業側が向上させたいと考える能力・スキルには逆相関関係があることが見て取れます。企業側が求める力のトップは「マネジメント能力・リーダーシップ」ですが、それに自信があると答えた社員は少なく、下位の方に位置しています。

中堅から幹部社員への成長過程には、「マネジメント能力・リーダーシップ」をはじめ、俯瞰的な視野や意志決定する力などが求められてきます。しかし、日常的な業務遂行だけでは、なかなか「自信がある」レベルにはなりづらいかもしれません。こうしたギャップを埋めるときに、研修は1つの有効な手段です。

「令和2年度 能力開発実態基本調査」厚生労働省(2021年6月)(「令和2年度 能力開発実態基本調査」厚生労働省(2021年6月))PDFで閲覧

特に意識したいのは、中核人材の育成です。高い専門性や技能等を有しながら、事業活動をリードしていくことができる人材のことですが、会社の将来に向けて計画的に育成を考える必要があります。実は「数年先の事業展開を予測して、そのときに必要となる人材を想定しながら能力開発を行っている」企業は、営業利益の増加割合が高いという調査結果もあります*1

■中核人材の育成に向けて設立された中小企業大学校

中小企業大学校は、まさにそうした中核人材の育成機関として設立されました。基本的に管理職以上を対象とし、経営戦略や組織マネジメント、生産管理等の研修を実施しています。全国9か所にキャンパスがあり、他に地域の関連機関と提携したサテライト・ゼミも実施しています。また、企業向け以外に、中小企業支援担当者対象のコースや、認定支援機関向けのコースもあります。

研修はいずれも、知識習得だけではなくディスカッションやロールプレイなどの実践演習を豊富に組み込んでいます。学んだことをすぐにその場で試して、実践力をつけていくためです。また、研修最後には研修後の行動計画も策定してもらいます。それぞれの職場で生かすために、実務との紐づけを重視したプログラムを用意しています。

研修形態や領域としては、主に次のようなものがあります。

  • ①分野別研修:テーマ・課題別に2~3日間で実施するタイプ。
    • ・企業経営・経営戦略領域:「成功するための経営戦略の策定とその実践」等
    • ・人事マネジメント領域:「チームで成果をあげるマネジメント術」等
    • ・財務管理領域領域:「キャッシュフロー重視による利益・資金計画」等
    • ・営業・マーケティング領域:「顧客満足を高めるクレーム対応」等
    • ・生産管理領域:「製造原価で考えるコストダウン実践法」等
  • ②長期コース研修:半年程度の期間に定期実施し、知識習得、課題実践を進めるタイプ。
    • ・経営幹部対象:「経営管理者研修」等
    • ・生産管理対象:「工場管理者養成コース」各地の中小企業大学校キャンパス(各地の中小企業大学校キャンパス)

■オンライン型の「WEBee Campus」は年々プログラムを拡充

2017年に閣議決定された未来投資戦略のなかで、中小企業大学校の強化についても方針が設けられました。それに従い、以下の3点をここ数年で拡充してきています。

  • ・オンラインを活用した研修:WEBee Campus
  • ・実践的な幹部育成プログラム:高度実践型経営力強化研修
  • ・地域機関との連携プログラム:サテライト・ゼミ

WEBee Campusは、オンラインで講義を受けられたり、動画教材視聴ができたりする仕組みです。講義には2種類があります。1つは定員5名の「オンライン・ゼミナール」です。「あらたな収益モデルの考え方・つくり方」「生産現場の改善に活用するIoT」といったテーマごとに、参加者が自社の課題を持ち寄って講師からアドバイスを得たり、参加者間で議論するなど、研修を通じて実務的課題の解決策を検討します。

また、2021年より拡充されたのが、定員10名の「オンライン・クラス」です。オンラインツールを活用して小グループに分割したグループワークを取り入れて、大学校研修により近いスタイルを再現します。1回の研修でグループワークを複数設けることにより、より多くの参加者と学び合う機会を提供します。

いずれの場合も、インターバル期間を含めたプログラム構成にしていることが特徴です。1回3時間の講義を、間をあけて4回開催するのを標準としています。間の期間をインターバルと呼び、そこでは職場実践を行ってもらいます。たとえば1回目の講義でコミュニケーション手法を学んだとしたら、インターバル期間に部下との面談を実践してもらいます。2回目にはその実践結果を持ち寄り振り返ります。うまくいかなくても次の講義時に改善のヒントが得られるなど、実践と研修を繰返して力を高めていける構成です。

中小企業大学校の研修特徴PDFで閲覧

管理職比率の傾向とも連動して全体的に男性の参加割合が多かったのですが、WEBee Campus開始後に、女性参加割合も徐々に高まってきました。やはり3日間の教室クラスとなると、都合がつけられない人も出てきます。時間的制約、移動の制約がある人にとっては特に、オンライン講座を活用頂けたらと考えています。

■経営幹部に最適なケースメソッドプログラム

拡充の2点目である実践的な幹部育成プログラムとは、全13日間の講座を約半年かけて行う長期研修です。経営幹部向けの研修で、経営現場を疑似体験するようなケースメソッドを使って議論します。大企業の企業内大学で実施されるようなプログラムと近いイメージですが、ケースはすべて中小企業のものでつくられています。情報分析や意志決定の疑似体験ができますし、他社参加者との議論で、視野も大いに広がります。同じような立場にいる他社幹部と交流できるので、ネットワーキングに役立つという声も伺います。

また、拡充3点目のサテライト・ゼミは、大学校の研修をより身近で受講いただけるよう、大学校の設置されていないエリアをはじめ、全国80か所以上で開催する郊外研修です。この研修は、地域の中小企業支援機関と企画・構想段階から連携して実施しますので、より地域が抱える経営課題や人材育成ニーズに対応したテーマ・内容の研修を提供することも特徴です。この研修でも、同じような立場・役割を担う様々な業種からの参加者との議論を通じ、社内とは異なる観点に触れながら学びを深められます。

■実務・研修・面談を組み合わせて、育成サイクルを回す

いずれの研修も、職場での実践とつなげられるよう意識していますが、あわせて重要なのは研修前後の働きかけです。特に管理職の育成の場合は、経営層が面談等で意識づけをサポートすること、そして研修での学びをメンバーに共有する場をつくることの2点が、実践力に影響すると言われています*2。なぜ研修に派遣するのか、どういう成長を期待しているかを伝えることもその1つです。

ある会社の場合は、「同じ目線で議論できる人を増やしたい」と、社長自らが受講し、その後幹部を順に受講させていました。他社の人と議論すると、自身がどの程度通用するのかといった点に気づくことになります。他流試合効果、視野拡大を期待して、社長が自ら参加する例も少なくありません。

研修参加者からは、「経験をもとにできていると思っていたけれど、研修で改めて理論的な部分を確認できた」「これまでの実践方法が間違いではなかったと改めて認識できた」といった感想がよくあがります。参加前には「自分は十分できているし、わざわざ学ばなくてもよい」と内心思っていた人もいるようですが、体系的に学ぶ機会を経て、より確信的に実践できます。

ぜひ会社の将来に向けて、中核人材、後継者人材の計画的な育成について考えてみてください。たとえば管理職に昇格した人に研修受講を促し、さらに後継者候補人材を長期研修やサテライト・ゼミに送り込む。研修派遣前後には社長面談を実施し、今後のキャリアについても話していく。そうした育成のサイクルを回し、将来にわたる人の活躍を実現していきたいものです。

中小企業大学校の詳細リンクWEBee Campusの詳細リンク

*1:(独)労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果」(2016年9月)参考*2:『中小企業の人材開発』(中原淳・保田江美 著)参考