海外旅行者向けに英会話のプチレッスンを提供するサービスで人気となったIWAKURA TRAVEL。数あるオンライン旅行代理店の中でも、UXやUIにこだわったECサイトは利用者から評判がいい。

「いま力を入れているのは『持ち物リスト』です」

岩倉具視社長はそう言ってパソコンの画面を見せてくれた。

「旅行は、その土地ならではの体験をしに行くものですよね。だからとにかく歩き回る。最近ではタクシー配車アプリなども普及して移動の手段は増えました。でも、日本語が通じない地域では、みんな少しの移動なら地図アプリを見ながら自分の足で歩くんです。そこで問題になってくるのが、持ち物」

徒歩の移動が多くなる旅先では、服装や持ち物に関して安全面や動きやすさを考慮しなければならない。だが、そうした情報はツアーごとにまとまっているわけではなく、国別の治安情報や旅程を見ながら旅行者が準備するのが一般的だ。

「ツアーでも個人旅行でも、持ち物リストって点在していてすごく見づらいと思っていました。パリに行くとしましょうか。シャンゼリゼ通りでカフェに入りたい、エッフェル塔を見たい、凱旋門に登りたい。やりたいことが複数あった時、どんな靴を履き、どんな持ち物があるといいのか。凱旋門は階段で上まで行けるんですが、ヒールだと足がつらいから身軽なほうがいいとか、そういう情報が意外と大事だったりします。旅程を決めた瞬間に持ち物リストがひと目でわかれば、パッキングが相当楽になるはずです」

IWAKURA TRAVELでは、観光名所やアクティビティごとに持ち物リストを表示するようにし、やりたいことや行きたい場所にチェックを入れると持ち物リストが自動生成される仕組みをつくった。

「アクティビティって、用意するものや望ましい服装が予約後にわかるケースが多いじゃないですか。しかも予約メールのどこに書いてあるかわからなかったり、自分でホームページを確認しないといけなかったりする。これまではお客さんが持ち物リストを自分で準備していたわけですが、その手間をなくしたいんです」

実際にアクティビティを経験した利用者が、持ち物や服装に関してリアルな感想を送ってくれることも多いという。

「靴に関しての失敗エピソードが面白くて参考にさせてもらっています。海外は日本と違って道が舗装されていないことも多い。一般的な観光地巡りだけでも、足は思っている以上に疲れるんです。気分が高揚しているので普段より歩けちゃうんですよ。それに海外で自分に合う靴を探して買うのは意外に大変ですから」

持ち物リストの自動生成は、海外旅行にかぎらず国内旅行にも導入している。

「精度の高い持ち物リストを作成する上で、取引先への事前確認は必須となります。その数は膨大ですが、量は当社の強みでもあるわけですから、いかに効率よく確認に回せるかという視点や、地域ごとに情報を集約して確認の工数を減らせるかがポイントになります。その際、名刺管理アプリを使って管理や情報整理をするようにしました。本部との共有にタイムロスがないので、ECサイトへの反映もスピーディにできますよ」

このアプリをフル活用しているのがIWAKURA TRAVEL営業部の若手精鋭が集まる「岩倉使節団」だ。名刺交換したその日のうちに相手のデータを取り込むようにすれば、新しいアクティビティを提供してくれる会社との連絡がスムーズにでき、近郊の施設との関連付けも簡単に済む。

「お客さんが知りたい情報を見やすく提供できる、日本一使いやすい予約サイトにしたいですね」