BtoC事業において、顧客の不満は宝の山と言われます。サービス改善のヒントが隠れているからです。しかし、株式会社MANJIRO英会話のジョン万次郎社長と株式会社IWAKURA TRAVELの岩倉具視社長は、顧客が不満を持つに至った感情の背景まで把握せよ、と語ります。（※インタビュー内の記載ではジョン万次郎社長はジョン記載ご希望だったので敬称は略しています）

――MANJIRO英会話では２年ほど前から急激に新規入会者を伸ばし、今では会員継続率で業界トップを誇っています。

ジョン：MANJIRO英会話はオンラインに特化した英会話スクールで、幅広い年代で好評いただいています。以前は退会者があとを絶たず、苦しい経営を強いられていました。転機になったのはレッスン教材の見直しです。私たちが取り入れたもの、それはエンタメ・レッスン。アニメや漫画による英語上達方法ですね。

――どのスクールもやっていない方法ですね。

ジョン：なぜみんな英会話スクールが続かないのか？ 楽しくないからです。なぜ楽しくないのか？ 授業だからです。英語は習慣にならなければ身につかないので、自宅学習がすごく大事。でも自分で時間を取って、きちんと予習復習ができる人は多くないんです。自分のためになると思ってもね。なら、自分が自然と触れているものにレッスンの要素を混ぜればいい。日本では多くの人がアニメを見るし、漫画を読んでいますからね。

岩倉社長：日本へ観光に来る外国人旅行客にも、世代を問わずアニメや漫画は人気です。海外の大都市にある本屋には必ず漫画コーナーがあるし、アニメは配信サービスが充実しています。歌舞伎や能などの伝統芸能はもちろん、好きな作品の聖地巡礼をしたいという声もよく聞くんです。アニメや漫画は世界における共通のトークテーマと言ってもいいほど。万次郎さんの目のつけどころは鋭いです。

ジョン：外国人が独学で日本語を勉強する時、だいたいアニメと漫画なんですよね。それを反転させる。日本人もアニメと漫画で英語を学べばいいんですよ。

――逆転の発想というわけですか。

ジョン：詰め込みや繰り返しは子供の頃はいいけど、大人になるほど辛くなる。退会時のアンケートにね、「アニメや漫画を見る時間がなくなったので」というコメントがあったんです。その時、ハッとしました。レッスンのために時間をつくらせるという従来のあり方では英語学習は続けられないんだと。

岩倉社長：私もためしに体験コースを受けてみたんですが、作品ラインナップが豊富で講師の熱量もハンパなくて、時間が経つのがあっという間でした。学習がエンターテイメントになっていて驚きましたよ。そこで、万次郎さんにあるお願いをしたんです。

――IWAKURA TRAVELの予約サイトから、レッスン予約もできる。これですよね？

岩倉社長：そうです。ツアーが確定されたら、MANJIRO英会話のプチレッスンを受けられる特典をつけました。海外旅行って、ガイドブックやネットで渡航先の情報を調べて解像度を上げて行きますよね。で、いざ行ってみたら緊張で簡単な英語もまったく出てこない…（笑）。言葉の壁を感じて楽しめなかったという口コミを見て、何とかしたいと思いました。それこそパッキングの延長みたいな感じで、手軽に英語への解像度を上げられる方法を提供できないかと考えたんです。

ジョン：岩倉さんからお話を聞いた時、すぐにやりましょうと答えました。海外旅行にはその前後にすごく大きなポテンシャルがある。行く前は英会話を習う大きな動機になるし、帰ってきた後は岩倉さんがおっしゃるように英語の解像度が上がっていて吸収力が高まっているので、スムーズにレッスンに入れるんですよ。お互いがウィンウィンになる提案だと思いました。

――ECサイトの改修などが必要だったと思いますが、大変ではなかったですか？

岩倉社長：少し時間はかかりましたが、中小機構のアドバイザーに色々聞きながら進めたのでうまくいきました。旅行予約サイトの多くはカスタマーサポートを削って利益を確保する部分がある。必要最低限のことしか対応しなかったりね。私はむしろ、英会話レッスンへつなげることもそうですが、カスタマーサポートが旅の満足度を左右すると思います。

ジョン：我々の会社のスタッフがやることは予約管理画面をチェックすることだけです。あらゆることが「予約管理アプリ」で一括管理されているので、流入の導線が増えても何の問題もありませんでした。

岩倉社長：準備体操をしておくと、受け身じゃない旅にできるんです。レッスンを受けたお客さんの満足度は軒並み高く、リピート率もいい。どうして今までやってこなかったんだろうと思うくらい、良いインパクトになりました。

――素晴らしい相乗効果ですね。最後に今後の展望をお聞かせください。

岩倉社長：今は社内の若手グループ「岩倉使節団」が日本文化の紹介動画を計画中です。オンラインツアーはこれからさらに拡大していくでしょう。ディープになればなるほど需要があるので、例えば味のある裏路地や地元客でにぎわうお店など、日本の人が見ても面白いコンテンツを発信していきたいです。

ジョン：ジャパニメーションとレッスンの掛け合わせを他言語で展開させていくのはもちろん、英会話学習という広い海で漂流している迷い人を救出できるように、SNSを使った宣伝にも力を入れたいです。英会話スクールが日本と海外の架け橋になれるように、チャレンジを続けていきたいですね。

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