株式会社フィットネス誠に、プロテインのドリンクスタンドがオープンした。朝は出社途中の、昼時には近隣のオフィスに勤めるビジネスパーソンが我先にと駆けつける人気スポットである。
「誠プロテインのプレーン味、お待たせしました」
接客をこなすのは近藤勇社長。その日の体調を話すとおすすめのプロテインを選んでくれたり、身体づくりに関する豊富な知識をもとに食事のアドバイスをくれたりと、強面の外見からは想像できない親身な接客が好評だ。
「会員さんからトレーニング中でも手軽にタンパク質を補給したいと言われて、ジム内に仮設したところ評判が良かった。それで今は場所を増設し、新規のお客さんとのタッチポイントとしてこのドリンクスタンドを活用しています」
ジムの会員なら、トレーニングエリアで誠プロテインを特別価格で飲むことができる。その様子が一般向けのドリンクスタンドから見えるので、興味を持って立ち寄る人も多いらしい。
「健康の基本は、バランスのよい食事と十分な睡眠。タンパク質に限っても1日の摂取目安は18歳以上の男性は60g、女性では50gと言われている。食事だけではなかなか補えないですよ」
客足がまばらになったところで、近藤社長は道ゆく人に鋭い視線を投げかけた。オフィス街だからか、浮かない顔をして疲れた身体で歩く人が多い。
「私たちは日常生活を送るだけでも、ごくわずかに怪我をしていると言われる。トレーニングはそれを適切にコントロールし、回復させることで身体を鍛えていくもの。そのきっかけにドリンクスタンドがなってくれたら」
興味があっても、トレーニングやフィットネスになかなか踏み出せない人も多い。彼らを有力な潜在顧客ととらえ、リアル店舗の強みを生かしたコミュニケーションができないか考えたのだという。
「今日は少し気温が低いです。身体を温める意味でも、ホットココア味はどうでしょう」
近藤社長は接客に戻っていた。二人連れの女性客はどちらもホットココア味を注文したようだ。
「ポイントカードのご提示ありがとうございます。次回は無料です」
営業スマイルは皆無だが、鍛え上げられた腕から差し出される誠プロテインはなるほど健康的で、美味しそうに見えた。
「もともとジムの会員さんとのコミュニケーションを密にするため顧客管理アプリを導入したのですが、今はドリンク会員にも力を入れています。さっきのお客さんのようにスマホにポイントカードを登録してもらえれば、クーポンを送って来店促進もできる」
にわかに女性客が増えはじめた。フィットネス誠の若手トレーナーたちが店番にやってくる時間のようだ。
「この時間帯はいつも売り上げがいい(笑)。お金で買えぬものは信用。質のいいものを誠実に提供することが肝要です」
フィットネス誠のビジネスにおいて、顧客とのコミュニケーションを強固にし売り上げに貢献する「顧客管理アプリ」とは?アプリ導入の経緯とその効果について聞きました。
――導入に至った背景を教えてください
既存の会員さんの満足度をもっと高めたいと思ったことがきっかけでした。会員継続の動機づけになるような還元キャンペーンなどを手軽に行いたいとずっと考えていたのです。
――導入の効果はいかがですか?
トレーニング中の会員さんから特に評判がいいのは、メルマガなんですよ。トレーナーからのアドバイスをピックアップして配信したり、激励メッセージを動画付きで届けるようにしたら来店頻度が上がった。雨の日は誠プロテインが1杯無料になるキャンペーンなども効果がありますね。
――御社らしい使い方の例を教えてください
ドリンク会員専用のポイントカードを作りました。スマホで簡単に登録でき、ゲンコツのスタンプが6個貯まったら1杯無料。なぜゲンコツかって?私の特技なんですよ、口にゲンコツを入れるのが。若手の連中が面白がって、スタンプにしろと。お客さんに不思議がられますが、コミュニケーションのきっかけになってますよ(笑)。