新進気鋭の起業家で家電業界の風雲児と評される坂本龍馬社長は、同じ土佐の出身で骨董を扱うMINKEN.comの経営者である板垣退助社長のもとを訪れました。坂本社長は、板垣社長から「DXで成功する秘訣」を聞き出そうとするのですが…?
――坂本社長がこの対談を申し込まれたんですよね。
坂本社長:ええ、ぜひにと。板垣さんの評判は家電業界にも聞こえています。
板垣社長:悪評でないといいがね。
坂本社長:とんでもない。ECサイトで大成功した先駆者ですから。みんながその手腕をこぞって真似する憧れの大人物ですよ。
板垣社長:私の手柄というより、流行りの言葉でいえばDXの恩恵でしょうな。だが、規模では勝てない中小の小売が生き残るには最善の道です。
坂本社長:早速、本題だ。板垣さんのMINKENではどんなDXを行っているんですか?
板垣社長:まずはタスク管理をアプリで行えるようにし、最近では経費精算を自動化しましたね。
――目新しいことではありませんよね。どこの企業でもやっていることに聞こえますが…。
坂本社長:そこですよ。他所と同じことをやって売り上げでは出し抜く、僕はそのカラクリが聞きたくて来たんです。
板垣社長:DX、DXとかまびすしいが、重要なのは何をDXすればいいのか知ることです。経営者自身がまず、己をよく知ること。つまり事業だ。うまくいっていない、足枷となっている部分を理解すべきです。
坂本社長:無闇にデジタルを導入すればいいわけじゃない、と。
板垣社長:デジタルを導入することが目的化して、逆に社員の負荷を増やしたり顧客が離れたりしたら意味がないからね。古典的なやり方だが、私は社員であるエンジニアやデザイナーに対して業務上のペインを調査しました。
――現場で働く人の実感をもとに、どのアプリを導入するか決めたのですか?
板垣社長:そうです。彼らは買い付けで世界中にいますから、場所や時間に縛られず自由にタスク管理できるアプリが必要だと訴えた。さらに私自身を振り返ると、一番時間を取られている業務は経費精算だと気づいた。ならば真っ先にDXすべきなのはこの二つ。
坂本社長:驚いた。カラクリどころか、かなり基本的な話ですね。
板垣社長:そんなものですよ。紙の帳簿がデジタル化されたところで、データを前にして想像力を働かせず眺めているだけなら、ただの数字の羅列にすぎない。問題はDXではなく、DXをどう活かすかなんです。
坂本社長:そう言えば、僕も桂さん(株式会社アドキドエージェンシーの桂小五郎社長)や西郷さん(せごどんPETS株式会社の西郷隆盛社長)と一緒にビジネスするようになったら出張が増えてね。請求書関連の業務が煩わしくなって、すぐアプリを入れたんです。
板垣社長:煩わしさが行動を促したんだね。つまずきをフラットにしようとする考え方は商売では重要ですよ。
――詳しく聞かせてください。
板垣社長:ECサイトでは、UX(User eXperience)つまり顧客体験を最適化することが売り上げにつながります。最適化のためには、顧客がサイト内のどこに不自由を感じているのかを見つけなければならない。
坂本社長:自社の社員が業務のどこに不自由を感じているか調査したように、か。
板垣社長:ご名答。社員の不自由に目を向ければDX、顧客の不自由に目を向ければUXだ。
坂本社長:色んな横文字が黒船みたいにやってくるが、結局は人の気持ちや行動をしっかり見て、それに向き合わねばいかんのですね。
板垣社長:困っている人を見たら助けようと思うでしょう。商売だからと言ってなにも非情になることはない。自分を含めて社員や顧客が困っている原因を取り除くことが、結局は利益になるのです。
坂本社長:なるほど、それが信頼につながるんですね。今日はいい話が聞けた。
板垣社長:期待していますよ。社長ブログも頑張ってもらいたい。
――日本洗濯記、ですよね?
坂本社長:板垣さんのブログくらい知名度を上げたいですね。嫁さんにも登場してもらおうかな。
板垣社長:お龍さんならPVが跳ね上がりそうだ。
坂本社長:DXにUXにPVか…やるべきことが山積みで武者震いが止まらんぜよ!