ペット第一の経営を行う、せごどんPETS株式会社。社長である西郷隆盛氏の心優しい人柄と熱意あふれる従業員たちの接客が評判を呼び、鹿児島を拠点として順調に店舗を拡大してきた。九州全域そして全国展開も視野に入れていた矢先、コロナ禍に。営業自粛を余儀なくされ、発想の転換でオンラインに活路を見出した。
「店で直接会えん時は、Webで間接的に会う。少し考えれば道理なことです。なにより子犬たちの元気な姿をお見せしたかった」
ペットショップは口コミや接客が売り上げに直結するため、西郷社長は店頭でのコミュニケーションには力を入れてきた。ただ今後も休業要請が頻発すれば、利用客や見込み客との接点は減ってしまう。必要最低限の情報だけだったホームページのリニューアルは急務だった。
「少し調べたら動画も簡単に載せられるとわかり、これはいいと。スタッフ総出で撮影を始めました。われわれも素人ですからカメラがブレたり子犬たちがフレームアウトしたり、アクシデントは日常茶飯事。編集もせず載せていたんですが、意外に反応が良くて」
わんぱくな子犬たちに振り回されるスタッフの動画は評判になり、地元メディアにも取り上げられた。時にはカメラ嫌いの西郷社長も自ら出演し、思わぬ反響があったという。
「スタッフ個人を指名して、あの子犬が飼いたいと相談がくるようになったのです。家族のように愛情を注いで接する姿勢を動画で見て、多くの人が共感してくれた」
リニューアルしたホームページにはアクセスした人の年齢や性別などを確認できるアナリティクスという機能があり、ペットを求める人の最新の傾向を知るのにも役立っている。運用を続けて3ヶ月ほど経ち、自粛明けには新規で来店する客が一気に増えた。そんな時、西郷社長は動画についたあるコメントを見て愕然とする。
「最近飼い始めたウチの子が可愛くない、世話をしたくない。確かそんなコメントで…ショックでした。その日は飯が喉を通らんかった。今、この業界はコロナバブルと言われて衝動買いが増えている。癒しを求める気持ちはよくわかります。でも飼う以上は命と向き合う覚悟が必要なんです。だから動画を使って、飼う手前のフォローをしたいと考えるようになりました」
まっすぐ前を見つめる西郷社長の大きな瞳に、意志の強さが表れている。早速、取引のあるブリーダーや知り合いの獣医師に打診、オンライン座談会を企画した。ペットを飼う際の心構えや悩み相談など双方向のコミュニケーションにつなげ、全国から集まった視聴者はゆうに1000人超え。利用客のなかには、動画を見て会社のファンになったと話してくれる人もいたという。
「たくさんの人が、私たちのミッションである"敬天愛犬"を応援してくれています。人も動物も敬う。当たり前のことですが、彼らも歳をとり、怪我をし、病気を患うのです。その時間に寄り添い、苦楽をともに生きることが愛するということ。これからもホームページで発信を続けたいです」
命あるものでビジネスを行う社会的責任を果たしながら、人とペットのよりよい未来を目指すせごどんPETSからますます目が離せない。
せごどんPETSがコロナ禍でも顧客との結びつきを強固にできた、「ホームページ作成アプリ」。スピード導入を後押ししたのは、同じ経営者で盟友でもある株式会社日本利通の大久保利通社長の助言だったと言います。今回は、二人のオンライン対談が実現しました。
やあ、久しぶり。
西郷の活躍は聞いているよ。まさに八面六臂といったところだな。
助言をくれた大久保君のおかげだ。
わが社でもホームページをはじめ、手近なIT活用の重要性は議題にのぼっていたからね。ただBtoBだとどうしても設備投資を優先してしまう。機動力のある西郷の会社が羨ましいよ。
ハードが先、ちゅうのも悪くはないがね。
経営陣はそう考えるが、現場の本音は少し違う。日々の雑務の負荷を減らしてほしいと思っているんだ。多額の費用をかけて設備を増強するのはいいが、それを扱うのは結局自分たちじゃないか、と。
確かに、大久保君のところは従業員も多いから管理コストも馬鹿にできんな。
業界特有の慣例を一新するのは簡単ではない。経験値の蓄積やマンパワーで何とかなってしまう面があるから、課題が見えているのに解決の道筋がうやむやにされてしまうのだ。
ITへのアレルギーもあるかもしれんな。
われわれの業界ではAIやロボティクスを親の仇のように敵視する考えもまだあるからね。仕事を奪われるという先入観が恐怖感につながっているんだ。
実際には社員が最も恩恵を受ける仕組みなんだがな。
その通り。西郷の会社がいい例だが、一つ始めてみると活用方法はかなり広がる。今は様々なサービスを連携して一気通貫にできるからやらない手はない。
大久保君は今年から強靱化計画を進めているんだろう。
脆弱性は緊急時に露呈すると、今回のパンデミックで改めて感じたのだ。地震や台風被害といった大規模災害への対策も手薄だったことを痛感したよ。天災はよく戦時に例えられるが、平時では予測不可能な事態に備えて企業として万全を期すことは重要なリスクヘッジになる。
なるほど。わが社も検討せねばならんな。
企業同士の連携も必要な課題だ。またいつでも相談してくれ。
心強い。落ち着いたらまた酒を飲もう。
ああ。今日は久しぶりに話せて有意義だったよ。