ミシュランの星付きフレンチレストランを経営する徳川慶喜オーナーシェフは、食品廃棄の問題に取り組んでいます。そこでマッチングしたのは、なんと結婚相談所のヒメドットコムを運営する篤姫社長でした。
――お二人はフードロス問題でパートナーシップを結んだそうですね。
徳川オーナー:おや、インタビュアーが解せぬという顔だ。
篤姫社長:無理もありませんよ。レストランと結婚相談所が手を組んでフードロスを解決すると聞いても、なかなかイメージが浮かばないでしょう。
徳川オーナー:確かにね。僕の店は世界に一つしかないが、稼働率は常に100%。食品廃棄の問題は以前から気になっていたんです。そこで懇意にしてもらっている篤姫さんに声をかけた。
篤姫社長:ご相談を受け、私たちが運営する大奥スペシャルサイトというメディアの会員さんを集めて会合を開きました。実際にchez YOSHINOBUさんのコースをいただきながら、材料や農家さんとの契約内容に至るまでたくさんお話をして。
徳川オーナー:大奥の皆さんは、各業界の第一線で活躍している優秀な人ばかりでね。僕が思いつかないような意見がどんどん出てくるんです。
――話し合いの中で生まれた具体的なアクションが「廃棄野菜の買い取り」だと。
篤姫社長:慶喜さんのお料理は、野菜が絶品なんです。新鮮で艶があって食べ応えのあるお味。こだわりが強いからこそ、廃棄に回してしまうことも多いとお聞きして、「もったいない」の大合唱が起きました(笑)。
徳川オーナー:店として、一番いい状態でお出しする理念は譲れない。それだと廃棄するものが出てしまう。じゃあどうするか? 大奥の皆さんが口々に「家でこの野菜を食べたい」と言うんです。それなら買い取ってもらおうと。
篤姫社長:chez YOSHINOBUさんでの最高の食体験をお裾分けいただける。レストランと家庭がつながるような感覚がありますし、食卓を華やかにできます。
――なるほど、料理に満足したお客さんなら買いたくなりますね。大奥スペシャルサイトでも、企業同士の連携としてトップビューにその記事が載っています。
徳川オーナー:いい取り組みや面白いコラボレーションって世の中にたくさんあるけど、大きな問題がある。それは知られていないこと。知ってもらうためには、発信場所が重要なんです。
篤姫社長:大奥スペシャルサイトは、国内トップクラスの訪問者数を誇ります。人が集まる場所に情報も集まるもの。コメント機能もあって、有意義なフィードバックをもらえますよ。集合知ですよね。
徳川オーナー:食品の廃棄量や廃棄率を記事化するのはレストランの傷口を見せるようなものだから当然、嫌ですよ。でもフードロスは社会問題だから、共有したほうがいいと思った。
――予約の段階から、廃棄野菜を見えるようにしたそうですね。
徳川オーナー:予約管理アプリを有効に使っています。予約客には前日にリマインドメッセージが届く仕組みですが、野菜の余剰分を開示したんです。当日、食後のコーヒーと一緒に「お一ついかがですか?」と野菜を持っていく。
篤姫社長:デザートと勘違いされる方もいらっしゃいますよね。
徳川オーナー:ええ。その場で「もう少し食べたいからこの玉ねぎで調理してくれ」と頼まれることも。その時は料金を上乗せしてお出ししてます。いずれにしても、廃棄はほとんどしなくなりました。
篤姫社長:ヒメドットコムでは、会員になればchez YOSHINOBUさんの優先予約ができるベネフィットをつけています。また、遠方にお住まいでお野菜を買いたいという方もいるので、そのご相談にも乗っていただいています。
――大口の顧客を持つと大変ではないですか?
徳川オーナー:いいえ、まったく(笑)。予約関係はほとんどアプリで管理できるので、僕は楽なもんですよ。むしろ食品廃棄がなくなってストレスが減り、趣味に打ち込める時間が増えました。
篤姫社長:慶喜さんには、お元気でいていただかなくては。
徳川オーナー:僕は健康のために黒大豆を毎日100粒食べてますからね。長生きするつもりですよ。